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「愛はただの感情で、真実じゃないのよ」

 

ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の『マリア・ブラウンの結婚』を見た。

 

借りようと思ったら都心の一部のTSUTAYAにVHSでしか置いてないし、

なんかまー正直古臭い映画だろうなーと思って見るのを渋ってたところあったけど、

まあこれが見始めたら面白くて目が離せなかった。

 

記事タイトルは、戦争から還ってこない、帰還が絶望的な夫を信じて待ち続けるマリア・ブラウンに対して、知人の女性が放った一言。

ぐさーっとくる台詞オンパレードの映画の中でも最も印象に残った。

 

極力ネタバレしないように感想書く主義なのでアレなんだけど、

「愛」を懐疑的に考えている人が見たら面白く感じられる映画なのではないかなーと。

 

いつ還ってくるか還ってこないか、きたとしても自分のことを愛しているのかすらわからない夫と暮らすことだけを夢見て努力して、

社会的にどんどんのし上がって病んでいくマリアの姿が滑稽で見ていられない。

 

こんなにも美しくて頭が良くて商才のある女性が、どうしてあの男一人との婚姻関係にここまでこだわるのかは映画内では全く描かれないわけだけど、

たとえ二人の出会いから丁寧に描いたとしても、マリア以外の人間には決して理解できないだろう。し、だからこそ、愛なんだろうということで。

もう本当にもやもやする笑。

 

展開のテンポと台詞の小気味の良さでうまーく誤魔化せているけれど、

ストーリーと登場人物の心情をなぞると、こんな激鬱映画もそうそうあったもんじゃない。

でも今まで見た映画の中で、最もくらいにきちんと人生の本質をついているように感じられて、見終わった後にはおかしくなって声を出して笑ってしまった。

 

人生って本当に空っぽで呆気ない。

どんなに才能のある人も、人間が優しい人も、愛とか性欲とか金に対する欲に振り回されて踊らされて、人相だって変わるしやつれてボロボロになっていく。

そうしてまで掴んだものだって本当に呆気なく消えてしまうし、

そもそも人生自体が、人の命自体がはっと息を呑むほどに呆気ない。

まあ、だからこそただの感情でしかない愛なんてものに縋るしかないのかな、とか。

 

 

古臭い映画だろうな、と思った理由は、1979年制作の映画だからなんだけど、

いい意味で、本当に1979年につくられた映画だとは思えなかった。

当時ではマリアのようにどんどん出世してキャリアを積んでいく女性なんて少なかっただろうに、現代にまで通じる「出来る女性」像がびしっと表現されていたのは気持ちよかった。

そしてその分、その背後関係から見る側に生じる悲哀が増すっていう、ね。。

 

 

レンタルしようとすると、おそらく都心のいくつかのTSUTAYAにVHSくらいでしか置いていない作品だから、見るには少々ハードルが高いんだけれど、

こんな稚拙な文章では全く伝わらないくらい面白くて、考えさせられるシーンも台詞も多い映画だから、映画が好きな人は見たらいいと思う。