2015/06/28 特別限定復活公演 「Fatimaは二度死ぬ ~裸の刃物(ナイフ)を持つ男 2½~」 @渋谷TSUTAYA O-EAST
極彩色夢絵空事。
この瞬間こそが全て。
まさにその表現が似つかわしいライブだったと思う。
見た瞬間に笑ってしまうほど大きいミラーボールとか、
ただでさえ待ち時間が長いのに押してる開演時間とか、
人がいっぱいで始まる前から酸欠になりそうなフロアの空気とか、
そもそも久しぶりに来たヴィジュアル系の現場に対する戸惑いとか、
気になるところはいくらでもあったのに、ステージにぱっと明かりがついてSEが流れた瞬間に全てがどうでもよくなってしまった。
定番の形でメンバーが一人一人登場した後に、Mizuhaさんの爪弾くよく知ったフレーズが聞こえて、すぐ目の前には何度も夢に見たKanomaがいて、何を考えたわけでもなく涙が止まらなくなった。
一度も見たことがないはずのFatimaというバンドが、自分にとっていかに大きい存在かを思い知らされた瞬間だった。
ライブの内容は正直よく覚えてないし、はなからレポなら他の記憶力のいい人のツイートなりブログなりをさかのぼればいいやと思って、記憶する気すらなかった。
Fatimaは、ダウナーさんたちはずっと憧れの存在で、憧れのゼロ年代V系の象徴でもあって、そんなバンドを2015年の今、20代の私が見ているということについての興奮と感動で胸がいっぱいだった。
それ以上に、自分が20代であることすら忘れていた。
あんなに身体が軽くて、ときめきが止まらなくて、無条件な楽しさは、16~18の頃に盲目的にHitomiを信じていた頃のものと全く同質のものだった。
ただ、そこにいたのはHitomiではなくKanomaだった。
孤独と情欲を具現化させた存在。
ギラギラと光り欲情に濡れ、人の心を射抜く鋭さを持ちながら、そのすぐ背後に深い陰を宿し、切実なまでの寂しさを湛えるKanomaの瞳だった。
決して満たされることがないのを知りながら、それを得られる一瞬だけに全てを捧げる、ステージの上でしか生きられない魔物。
初めて見たはずなのに酷く懐かしくて、酷く愛おしかった。
「10年経ったのに全然気持ちが老けてない!大人になったことを放棄したからね!
みんなも大人になることを、大人であることを放棄したらいいよ。まあでもそれだと生活ができないから、たまに、少なくとも月に一回くらい、そうしたらいいんじゃないかな。でも、こちら側に近づきすぎたらいけないよ」
Star Spangled Butterflyは、本当にStar Spangled Butterflyって感じだった笑。
よくも悪くも距離の近すぎる今のV系シーンに染まってるバンギャルちゃんたちには、きっとわからない曲だと思うのです、これは。
ゼロ年代の世相を反映した曲だというべきか(とか言ってる私はゼロ年代にバンギャルできなかった人間だけど)。
Blue Velvetで紫色の照明を浴びたKanomaはとても綺麗だった。
哀愁の底辺のリフ、無条件でかわいらしいフリをするKanomaはかわいらしかったな。道化って言葉がよく似合う風体で。
紫陽花の前に、
「最近は紫陽花を見ると、少し嬉しいような、懐かしいような、誇らしいような気分になるんだ。きっとこれからもずっとそうだと信じているよ」と、ほんの少しだけ照れくさそうにはにかんだ笑みが何故か脳裏に焼き付いている。
過激なプライベートダンサーを呼んだとかなんとか言って現れたのがガチムチ系の男性だったのには少々面食らったけど笑。
ああ、あとLay様がKanomaの乳首をべろりと舐めた後にディープキスしたのにも面食らってしまったなあ。
かと思ったら、「無知な命へ」の夕暮れの色はとてもあたたかくて物憂げで綺麗だったし、「紬糸」の演奏と歌にはぐっと引き込まれて感極まるものがあった。
まあ、紬糸ってくっついたり別れたりを繰りかえすメンヘラカップルの曲だよなーとかしょうもないことを考えてもいたわけですが。
アンコールでメンバーが出てきた瞬間にステージに下着が何着も投げ込まれ、それを手にとってじっと見つめるLay様と、
「絶頂になったら下着でも投げればいいんじゃないとは言ったけど、今?アンコールでメンバーが出てきた瞬間?そういうことか?」と笑うKanomaと。
なんかライブはじめからくたびれた様子のTowaとか、
肩に変な可愛い生き物を乗せてるけど、自分自身が変な可愛い生き物みたいな4geさんとか、
二回目のアンコールのときに両耳に手を当てて、自分を呼ぶ声を求めるMizuhaさんの姿とか、
ああそういえば、ドSな視線でフロアを見下していたLay様が、ダウナーの狂いっぷりに満足して、少しだけ口をゆがめて目を細めた顔がとても素敵だった。
断片的に覚えてる記憶を書きだそうとすればするほど支離滅裂になっていく。
それで良い。だって本当にしっちゃかめっちゃか支離滅裂なライブだったのだから。
水を噴いた後に、子供らしくいひひと笑うMizuhaさんを見て、ああこの人が現役のバンドマンで私が現役のバンギャルだったらきっと、なんてことも思っていた。
「今この身体を突き動かすのは衝動だけ。だから俺はどんどんお前の知らない俺になるだろう。でも、お前が本当に見たいものは、それだろう? だから俺にも見せてくれよ、お前の」
頭に違和感があって、目の前を転がっていく人の形を見て、「これが本物のコロダイ!!!」と思った直後、転がってきた人の大体の体重が頭にかかって首の骨が折れることを人生初めて覚悟した。生命の危機である。
Kanomaがダイブしてきて雪崩こんだときとか、水分を持ち込んでないから脱水状態一歩手前だったこととか、まあまあそれ以外にも生命の危機を感じる瞬間はあったんだけど、そんなのも全部アドレナリンに変換されてしまうくらい気が狂っていた。
トリプルアンコールのキャンストは本当に本当に気が狂っていて楽しくて楽しくて仕方がなかった。
10年前と同じバージョンのLove Me
「慰めが欲しかった 求めていた 他に何もいらないほど」
あっそうか、人見晋平という存在は私にとって、そう思えた唯一の慰みものだったのだ、と、初めて気が付いた。今更気が付いた。
そういえば、静む体温もよかったな。
あれはKanomaだけではなく、人見晋平を象徴している曲だと思っている。
「俺はミラーボールになりたいんだ」
とにかく目に見えるもの全てが色鮮やかだった。
バンギャルとして初めてライブに行ってから4年半、私がずっと探していた見たかった景色の一つはこれだったのだと、はっきり断言することができる。
そして、もうヴィジュアル系に対して求めるものは見尽くせたということも。
まあ平たく言えば、我がバンギャル人生に悔いなし(但し生まれた時代を間違えたことは除く)、かな。
それでも、きっと私が一度も見ることのできなかったはずの、一番見たかったものを、このタイミングで見れたということには感謝しかありません。
本当にありがとう。一生忘れません。愛しています。