『そんなことどうだっていい、この歌を君が好きだと言ってくれたら。』 ハルカトミユキ
その日がきたら
赤くぬれ
かたくてやわらかい
385
青い夜更け
「好き」ってなんだろうってことを最近よく考えています。
私は今は日常的に一番よく聴いている音楽はハルカトミユキだと断言できるし、聴かずにはいられないし、ライブにもできる限り行く予定をたてています。
でも、それが所謂「好き」ってこととイコールなのか、と一番考える対象でもあります。
きっとこのような疑問を抱いているのが私だけではない、ということも。
ハルカトミユキの音楽が合うということは、聴いていて楽しくなる、とか、思わず体が動いてしまう、とかではなくて、むしろ聴いているとたまらなく辛くなったり、息苦しくなったり、そういうことだからです。
MVを見て、ライブで青い夜更けを聴いて、発表からずっと楽しみにしていたけれど、蓋を開けてみたら想像を軽く超えるいいEPでした。
現段階では今年買ったもので一番好きです。
まず、こんなに流れの完璧なものっていつぶりに聴いたんだろう。
5曲ともがとってもいい曲なのは大前提として、構成によってその5曲がもっともいいかたちで聴けるようになっていて。
一番聴きやすいリード曲の「その日がきたら」、から、「赤くぬれ」でぎょっとさせられて、「かたくてやわらかい」が変化球的なクッションの役割を果たしてから、歌を全面に押し出した「385」、それから「青い夜更け」。
私はよくミニアルバムくらいのものでも途中でだれてしまったり、好きな曲が前半か後半に偏ってしまって通して聴くのが好きじゃなかったりしてしまうものも多いんですが、このEPは、この曲順こそが、この5曲を聴くのに最適なかたちだと聴くたびに実感し、結果的に何度も何度も繰り返し聴いています。
というか、プロモーションがすごくずるいな、って...笑。
ずるいというか、当然の方法なのかもしれませんが、リード曲のMVを見てつられて買ったら、他の曲のより強い殺傷力にやられて死亡系な音源。
今までハルカトミユキを知らずに、このMVを見て、なんとなくいいなーと買ってしまった人ほど、火傷している被害者なのではないでしょうか。
私は幸い他の音源も持っていて、ライブにも二回行って、青い夜更けを生で聴いたことがあるので多少ましだとは思いますが、それでも385で大火傷してしまいました。
でも、逆に、キャッチーさをもってして軽い気持ちで買わせてしまうからこそ、価値があるものだなあって。
ぱっと見から過激なイメージを前面に出してくるアーティストも素敵ですが、ハルカトミユキは決してサブカル的にも鬱ロック的にも振り切れ過ぎていなくて(そういう要素は強くありますが)、すんなりと誰の耳にでも入ってしまうのに痛いことを突いている、そのギャップが、多くの人に手に取らせる可能性と、ぐさぐさくる系音楽に耐性のない人を引き摺り込んでしまう可能性の両方を生んでいるから、もっともっと大きくなっていってほしいなと思わずにはいられないわけで。
5曲とも、ミユキさんのキーボードの不安定な響きと、ハルカさんの透明度が高くて真っ直ぐ届く歌が印象的。それって対極なものじゃなくて、表裏一体なもので。
本当は強いわけではないし弱いけれど、現実を見失わないように、自身の弱さにも世界の脆さにも真っ向から立ち向かう。その姿が強く映る。
そういう音楽だと思っています。
(そういう風に考えると、やっぱり本質的にamber grisと近いものを感じますね個人的には)
385は、大学生のときにつくられた曲だそうです。
今この曲に出会えて良かった。